01 背景
資源はある。
けれど、つながっていない。
駅、歴史資源、商店街、水辺。それぞれ単体では来訪の理由になる要素が揃っているのに、訪れた人が二つ目、三つ目へ足を伸ばさない。地方都市の中心市街地で、繰り返し見られる状況です。
担当部署はこの問題を認識していました。ただ「なんとなく歩きにくい」「なぜか人が流れない」という感覚を、予算要求や議会説明の場で通る言葉に変換できずにいました。整備の優先順位を決める根拠がないまま、要望の強い箇所から順に手をつけるしかない。この状態を変えることが、業務の出発点でした。
02 考え方
歩きにくさには、
必ず構造的な理由がある。
まちの回遊性は、来訪者の意欲だけで決まるものではありません。どこからどこまで見通せるか、駐車場がどこにあるか、道の幅がどう変化するか。物理的な条件が、人の動きをかなりの部分まで規定しています。
感覚を、感覚のままで
終わらせない。
私たちは、その条件を一つずつ定量化しました。感覚として語られていたことに数値を与えると、優先順位が自然に決まります。どこに投資すれば効果が最大化するかが、議論ではなく計算で示せるようになります。
03 用いた手法
4つの解析を、重ねて読む。
単一の指標では、まちの複雑さは捉えられません。性質の違う解析を重ね合わせることで、初めて構造が見えてきます。
METHOD 01
可視性解析
街路空間の見通しを定量化し、視覚的なハブとなる地点を特定します。人が直感的に流入しやすい場所、注目が集まりやすい場所が明らかになります。
METHOD 02
到達圏ネットワーク解析
駐車場や交通結節点を起点に、徒歩5分で到達できる範囲を算出します。駐車位置が来訪者の行動範囲に与える影響を可視化します。
METHOD 03
店舗立地・用途の空間解析
建物用途と店舗の分布を多層に重ね、エリアの成熟度を評価します。どこに余白が残り、どこがすでに動き始めているかを判別します。
METHOD 04
歩行環境の連続性評価
歩道整備の状況とセットバック距離を整理し、歩行動線の断絶が生じている箇所を抽出します。景観に優れた区間との対応関係も確認します。
設定した回遊ルート
着手すべき地点
既存店舗・空きストック
模式図/ 実際の解析結果は守秘のため掲載していません。手法と読み取り方を示すために作成した図です。
実案件で用いるデータ・ツール:国土地理院 基盤地図情報、3D都市モデル(Project PLATEAU)、depthmapX
04 研究との接続
どこに手を入れれば動き出すかは、
研究で分かっている。
代表は九州大学大学院で、小さな個店やクリエイターが自然と集積していくプロセスを研究してきました。複数のエリアを比較して見えたのは、安く低リスクで挑戦できる余白がある場所に、個性的な店が集まるという法則です。
この知見があるため、私たちは「賑わいをつくる」という漠然とした目標を、「どの区画の、どの規模の空き物件を、どの順番で埋めるか」という具体的な手順に落とすことができます。解析は現状把握のためだけでなく、この手順を設計するために行っています。
05 成果
議論の前提が、
感覚から数値に変わった。
- OUTCOME「歩きにくい」という感覚的な課題を、可視性と到達圏の数値として庁内で共有できる状態にした
- OUTCOME整備の優先順位を、要望の強さではなく解析結果に基づいて設定
- OUTCOME重点地区を抽出し、次フェーズの実証実験の対象地点を特定
- NEXT抽出した地点で、空間活用の実証と継続的な伴走支援を準備中
DISCLOSURE POLICY
実績ページでは、クライアントとの合意が得られた範囲のみを掲載しています。契約内容、費用、未公表の計画、および進行中案件の詳細については記載していません。解析結果を含む納品物は、すべて守秘義務の対象です。本案件では、団体名・地区名・具体的な数値の掲載を控えています。