大規模な跡地開発において、基本計画はすでに策定されている。その上で「スマートシティを実現する」と書かれている。ところが、それが具体的に何を指すのかが、関係者の間で共有されていない。
私たちが受けてきた依頼には、この構図が繰り返し現れます。技術のカタログは世の中に溢れていますが、それを自分たちの敷地と事業計画に接続する言葉が足りていない。センサーを置くのか、アプリをつくるのか、それは誰のためで、何を測るのか。判断の基準がないまま、導入候補だけが増えていきます。
事例調査から始めません。まず、事業者の方々とのディスカッションを重ね、その地区が目指す姿を言語化するところから着手します。
基本計画を一緒に読み込み、現時点の技術や、これから顕在化する社会課題のシナリオを整理する。そのうえで、完成時点から逆算して理想像を描く。この作業を経てはじめて、どの地区の何を調べるべきかが決まります。
ある案件では、4回のディスカッションと約30時間の調査を並走させました。調べた結果を持ち寄って議論し、議論の結果で次に調べる対象を決め直す。この往復が、単なる事例集と実際に使える資料を分けます。
性格の異なる地区を選び、推進体制・規模・目指す姿・実装されているサービスを同じ枠組みで整理しました。うまくいっている事例だけでなく、想定どおりに進まなかった事例も対象に含めています。
デスクトップリサーチだけでは、推進体制の実態や、市民がどう受け止めているかまでは分かりません。海外で開催されたスマートシティの展示会に赴き、行政の担当者へ直接ヒアリングを行いました。
配送人員の不足にどう対応しているか。高齢者のデジタル適応をどう進めているか。プライバシー保護はどう設計しているか。市民参加をどう促しているか。事前に質問を用意し、回答を一問一答の形で持ち帰っています。
そこで得た教訓のうち、最も繰り返し語られたのは「技術は手段であり目的ではない」という一点でした。流行りの言葉に惑わされず、渋滞や医療アクセスといった具体的な課題に立ち返ること。小さな実証から始めて横展開すること。この当たり前が、実装の成否を分けていました。
調査結果から導いたのは、データプラットフォームを段階的に育てるという構造でした。初期に情報基盤と利便性の高いサービスを整え、中間で事業者と市民を巻き込む支援機能を挟み、その上に高機能なサービスを載せていく。
見落とされやすいのが中間の層です。リエゾン組織、インキュベーション施設、コミュニティ団体。これらは技術要素ではないため計画から抜け落ちがちですが、参画事業者を増やし、市民の理解を得て、導入エリアを広げるためには不可欠でした。エリアマネジメント団体が置かれている地区が多いのは、偶然ではありません。
データの主権は地権者企業が保持し、外部サービスは必要に応じて API 連携する。収集と活用は、ICTインフラ、データ解析、セキュリティの知見を持つ事業者と共同で進める。運用の基本方針についても、あわせて整理しています。
この種の検討では「都市OSを自社で構築し、他地域へ横展開する」という構想が出てきます。私たちは、そこに率直な見解を返しています。
技術力をコアとして連携基盤をゼロから構築し、それをフレームワークとして他地域や他国へ展開するのは、非常に難しい。海外にはすでに多くの先行事例があり、いま同じことを始めても技術力だけでは差別化が困難だからです。
一方で、その地区だからこそ取得できる独自の指標やデータが生まれるのであれば、そこから得られるノウハウは他地域の課題解決に貢献しうるものになります。市民の行動変容を実際に起こせた事例なども同様です。
だからこそ、検討の順序が重要になります。どのコンテンツから、どのデータを取得し、どう蓄積・活用していくか。たとえば「出店しやすさ」をエリアのコアバリューに設定すれば、集めるべきデータは自ずと決まります。「コンテンツ設計 → データ戦略 → コアとMoatの明確化」。このサイクルを初期段階から意識しておくことで、スマートサービスの価値は中長期で大きく変わってきます。
実装面についても、地図ライブラリを活用すれば可視化の水準であれば比較的安価に構築できること、フルパッケージでの委託は相応の費用が発生することを、あわせてお伝えしています。私たち自身が Placebook を開発・運用しているため、判断材料を実感を伴った形で提供できます。
スマートシティやまちづくりDXに関する調査・コンサルティング業務は、これまでに複数件を受託してきました。開発事業者、自治体、大学機関と、依頼元の性格はさまざまです。
とりわけ北欧を対象としたスマートシティ関連の調査については、複数の受託実績があります。デンマーク、スウェーデン、フィンランドの各都市で進む取り組みは、技術の実装度だけでなく、市民の合意形成や行動変容の設計まで含めて参照する価値が高く、私たち自身も現地の機関との関係を継続的に築いてきました。国際都市間連携事業で培ったネットワークが、調査の解像度を支えています。
あわせて、国内外のエリアマネジメント組織を対象としたリサーチも手がけています。誰がどの財源で地区を運営し、行政・地権者・テナント・住民の間をどう仲介しているか。組織の形態と収入構造、担っている機能を横並びで整理する調査です。スマートシティの検討で見落とされがちな「運営の主体をどう置くか」という論点は、ここでの知見に支えられています。
共通しているのは、技術の導入そのものではなく「何を目指し、そのために何を測るのか」を決める段階での関与を求められている点です。私たちは都市計画・空間デザイン・データ解析・プロダクト開発を社内に持つため、構想から実装可能性の検討までを一続きで扱えます。
スマートシティ、まちづくりDX、データ活用。言葉は決まっているが中身がこれからという段階こそ、ご相談ください。目指す姿の言語化から、ご一緒します。
相談する