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ARTICLE 2026.03.10

【論文紹介】国際都市間連携を通じた
イノベーション地区の推進に関する論文が掲載されました

英国 Connected Places Catapult との連携を踏まえた、福岡市・北九州市のケーススタディ

Connected Places Catapult ロンドンオフィス

Connected Places Catapult ロンドンオフィス / 2025.09、本論文の現地調査にて

公益社団法人日本都市計画学会が発行する『都市計画報告集』No.24(2026年2月)に、代表取締役・岩淵丈和が共著者として参加した論文「国際都市間連携を通じた地方都市におけるイノベーション地区の推進に係る取組検討-英国Connected Places Catapultとの連携に基づく福岡市・北九州市におけるケーススタディ-」が掲載されました。日建設計総合研究所・九州大学・URBANIXの共同研究の成果にもとづくものです。

著者と所属

本論文は7名による共著です。

論文の著者所属欄には、岩淵は「九州大学大学院/URBANIX株式会社」の両方が明記されています。

研究の背景

英国のイノベーション支援機関 Connected Places Catapult(CPC)は、共通の都市課題を抱える地方都市同士を国際的に結びつける「Innovation Twins Program」を展開しています。「情報収集」「関係構築と普及」「実施拡大とコラボレーション」の3段階で進むプログラムで、2020年の英国・韓国間のパイロット事業を皮切りに、台湾、そして日本へと対象を広げてきました。2024年8月にはCPCの報告書で、カーディフ市×福岡市、スウォンジー市×北九州市という都市ペアの候補が示されています。

ただし、これまでの連携は洋上風力発電や半導体といった都市レベル・産業レベルのペアリングが中心で、個別の地区のまちづくりや都市開発といった、より小さなスケールへの応用は検証されていませんでした。論文はこの空白を埋めるべく、「国際都市間連携」をあらためて定義し、福岡市・北九州市を舞台に地区レベルでの適用可能性を検討しています。

「国際都市間連携」と姉妹都市の違い

論文では、従来の姉妹(友好)都市提携と「国際都市間連携」を対比させて整理しています。姉妹都市提携は行政部門が主体となり、記念行事や訪問団の相互派遣など親善・文化交流が中心で、成果指標(KPI)を伴わないまま関係の継続自体が目的化しやすいとされます。

これに対し国際都市間連携は、都市を「プラットフォーム(City as a Platform)」として捉え直し、行政だけでなく産業界・大学・市民・スタートアップまで含めたエコシステム全体を連携の主体とします。手法も政策対話・共同研究・ビジネス支援・技術実証といった実務的なものになり、共同プロジェクト数や投資誘致額、技術導入の進捗といった具体的なKPIを設定したマネジメントが可能になるとしています。こうした連携を橋渡しする媒介的な役割を「イネーブラー」と呼び、Innovation Twins ProgramにおいてはCPC自身がこの機能を担っています。

福岡市・北九州市でのケーススタディ

論文は、英国の「UK Innovation Districts Group」を参考に、日英で共有できるテーマとして「イノベーション地区(IDs)」を設定。福岡市・北九州市のなかから、将来IDsへと発展する可能性のある4地区(天神・博多、箱崎、北九州学術研究都市、若松)を独自に抽出しました。あわせて、立地・開発類型/産業テーマの一致度/主要ステークホルダーとエコシステムという3つの視点から、英国側IDsとのペアリング仮説を検討しています(例:天神・博多×Birmingham Knowledge Quarter、箱崎×Queen Elizabeth Olympic Park、北九州学術研究都市×Newcastle Helix、若松×South Wales Industrial Cluster/Cardiff City Region Energy Park)。

英国現地調査と「アンカー」「イネーブラー」

アバーサウ旧石炭火力発電所跡地での視察
アバーサウ旧石炭火力発電所跡地 / 2025.09
再生可能エネルギー拠点への再開発が進む現地を調査
CSA Catapult を訪問した一行
CSA Catapult / 2025.09
化合物半導体の応用拠点。アンカー・イネーブラーの機能を現地で確認

2025年9月15日から19日にかけて、英国の主要なIDsを対象に現地調査を実施。企業の集積といった表面的な産学官連携にとどまらない、機能的な相互作用があることを確認し、「アンカー」と「イネーブラー」という2つの概念に整理しています。大学や大規模病院、研究機関、グローバル企業など、地区のアイデンティティと信頼性を担保する重力源が「アンカー」。そのリソースをビジネスや社会課題解決へとつなぐ触媒として、海外のイノベーション地区とのネットワーク構築や投資誘致、スタートアップ支援などを担うのが「イネーブラー」です。英国の事例では、この両者が行政の定める上位計画やKPIのもとで戦略的に統合されている点が特徴とされています。

日本側への示唆として論文は、福岡市・北九州市にはアンカーとなる大学・研究機関はすでに存在するものの、その技術シーズや人材を海外の投資・ビジネスへ結びつける「グローバル・イネーブラー」の機能が未成熟であり、英国からのノウハウ移転の意義が大きいこと、また英国の「リビングラボ」「テストベッド」の考え方(都市そのものを実証実験の場として開放する)を取り込む余地があることを挙げています。

シンポジウムでの共有

2025年12月5日、福岡市内でシンポジウム「イノベーションを加速する国際都市間連携」をCPC・北九州産業学術推進機構(FAIS)・九大OIP・福岡地域戦略推進協議会(FDC)との共催で開催。URBANIXのほか、北九州市、九州大学、西日本鉄道、日建設計、日建設計総合研究所などが登壇し、現地・オンライン合わせて会場には100名を超える参加者が集まりました。終了後のアンケート(回答13名)では「満足」「とても満足」が合わせて9割を超え、福岡市・北九州市のイノベーション地区の現状を扱ったセッションに最も関心が集まる一方、国際都市間連携そのものを扱ったセッションも不動産開発・行政DX・国際連携に関心を持つ参加者から高い支持を得たとのことです。

結論と今後の展開

論文は結論として、①CPCのInnovation Twins Programの調査にもとづき「国際都市間連携」の定義と意義を明らかにしたこと、②福岡市・北九州市を対象にイノベーション地区というテーマで英国側とのペアリングを試行したこと、③英国での現地調査にもとづきアンカー・イネーブラーの役割とエコシステムの重要性を明らかにしたこと、④福岡市内でのシンポジウムを通じて、地区のまちづくりの文脈における国際都市間連携の可能性を確認したこと、の4点を挙げています。今後はCPCやシンポジウム参加の自治体・大学・企業などと連携しながら、具体的な地区における国際都市間連携を進めていくとしています。

URBANIXとの接点

URBANIXは2023年から、CPCが推進する北九州市と英国ウェールズを結ぶ Innovation Twins Program の日本側パートナーとして、訪問団の受け入れから協定、共同研究、学生交流までを担ってきました。今回の論文は、この枠組みを通じて現場で蓄積してきた知見を、岩淵が九州大学の研究者という立場からあらためて学術的に整理したものです。連携の経緯や具体的な取り組みについては、実績ページ「国際都市間連携事業」でもご紹介しています。なお論文の謝辞では、現地調査やシンポジウムに全面協力したCPCのGareth Davies氏への謝意も記されています。

キーワード

論文には「国際都市間連携」「イノベーション地区」「エコシステム」「アンカー」「イネーブラー」の5つのキーワードが付されています。

URBANIXは今後も、現場での実務を通じて得た知見を学術的な検証につなげながら、地方都市の産業転換とまちづくりの両立に取り組んでまいります。本件に関するお問い合わせはお問い合わせフォームからお願いいたします。


出典
范理揚・吉田雄史・岩淵丈和・佐藤将也・倉田遥・中川晃太・黒瀬武史「国際都市間連携を通じた地方都市におけるイノベーション地区の推進に係る取組検討-英国Connected Places Catapultとの連携に基づく福岡市・北九州市におけるケーススタディ-」『都市計画報告集』No.24, 日本都市計画学会, 2026年2月, pp.785-791
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※『都市計画報告集』は査読プロセスを伴わない報告集です。

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